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ハワイの若大将 (1963)監督・福田 純


開始より0:24(東京都渋谷区神山町)

「コラッ!何をしてるんだ、君たちは」
「すいません、こいつ、今日から僕の居候になったものですから」
「ええ? 居候の居候なんてのは聞いたことないな」

若大将シリーズ4作目、京南大学ヨット部の田沼雄一(加山雄三)は父親から勘当され、江口(二瓶正也)が居候する石山の家にやっかいになることに。
江口と雄一が石山の家の前で水を撒いていると、そこに石山の父親が帰ってくる、というシーン。



(撮影・2014・05・07)

どうやら石山邸は坂を登って突き当りになっている(実際は行き止まりではなく、突き当たって右に折れている)道沿いにあるようだ。
石山邸もその向かい側の建物も建て替えられている。突き当りに見える塀も作り替えられている。しかし角にある電柱が二本の支柱に支えられている様子が変わらない。
どうしてここが何処なのか分かったのか。それは後ほど。



開始より0:25(東京都世田谷区若林3丁目)

時節はお中元シーズン。雄一はデパートの配送のアルバイトをする。
配送所でトラックに届け物を積んで配送へ。



(撮影・2014・05・07)

世田谷通り沿い。現在はここにデパートの配送所はない。しかし電柱や並木が面影を残す。
どうしてここが何処だか分かったのかも後ほど。



開始より0:25(東京都渋谷区神山町)

若大将が運転する配送トラックは石山の家へ。石山の父親は地位のある人のようで、届け物も多い。
この角を曲がると突き当りになっていて右側に石山の家がある。



(撮影・2014・05・07)




(撮影・2014・05・07)

ではこの石山の家、デパートの配送所、この二カ所がどこであるのか、なぜ分かったのか。
「黒い画集・あるサラリーマンの証言」で東中野駅南口の商店街を特定された「とら猫金太」さんによる発見だ。

「今回気合を入れて探したらわかりました」

気合を入れれば見つかるというところがすごい!わたしなんか、この石山邸など、住宅街の中の今も残っているのかどうかも分からない建物の門の前など、これは分かるわけがないと諦め、探すという発想すらなかった。
ではまず石山邸から。



とら猫金太さんからのメール。

「二瓶さんが掃除している家(石山邸)ですが、電柱広告に花菱の文字が見えたので、道玄坂の花菱ではないかと思い、 すると坂のある高級住宅地は隣接する松濤か神山町ではないかと推定し、映像にあるように1軒で突き当りになるような 道路付けを地図で探したところ・・・」

道玄坂の花菱というのは老舗のうなぎ屋らしい。そういう知識がないと渋谷という見当もつけられない。たしかに道路地図を見ると突き当りになっている場所を見つけることができる。しかし教えられたから分かるのであって、渋谷近辺というだけの見当で探し出すのは・・いやあ、分かるもんなんだなあ。
次にデパートの配送所。



「配送所は世田谷区若林3-13-7。現在どらっぐぱぱすがあるマンションのところです。三菱のスタンドの所はわたしの持っている一番古い世田谷住宅地図には九州石油になっていましたが、都立図書館の昭和47年の住宅地図には三菱のスタンドになっていました。現在の東京トヨタ若林のあるところです。 また配送車が出ていくシーンの電柱の左に東京の亀の子マークの下に書いてある文字は東京都世田谷清掃事務所です。 現在も世田谷区世田谷清掃事務所があります。平成12年に都から区へ移管されたので当時は東京都でOKです」

すごい。よく読めたものだ。いや、都内の地理とその変遷に明るく、ここがどこなのか見当がつくからこそ読めるのだろう。素晴らしい。わたしもそういう土地勘がほしい。
とら猫金太さん、今回もどうもありがとうございました。

(協力・とら猫金太さん)



開始より0:29(アメリカ合衆国ハワイ州オアフ島ホノルル市内)

「こんちは。あの、僕、石山の友達の田沼ですけど」
「牛山の友達の谷間さん?」
「タニマじゃない、タヌマ。田沼雄一です」
「オー!谷馬さん!」
「いやんなっちゃうな・・面倒くさい、雄一って呼んでください」

いよいよ憧れのハワイ。シリーズ初の海外ロケだ。
雄一は石山の父親に頼まれて、ハワイで遊び呆けている石山(田中邦衛)を連れ戻すためハワイへ向かう。
現地で石山は彼の父親の知り合いである古屋(左ト全)の世話になっているはずなのだが・・・。

古屋邸の外観に使われた建物はホノルル市内の丘の上にある。ダイヤモンドヘッド、ワイキキ海岸を臨む絶景の場所だ。この地域は高級住宅地、あるいは別荘地のようだ。

田沼が空港からタクシーで古屋邸に向かう。





↑ 作品で田沼が古屋邸に到着したシーンから3枚。
↓ その現在をストリートビューで。


タクシーが坂を登り、左に曲がると角の家が古屋氏(左ト全)と孫娘のジェーン上田(ハヌナ節子)がいる古屋邸だ。しかし残念ながら古屋邸は建て替えられてしまった。
実はこの古屋邸のロケ地、以前は近い位置なのだが違う場所を古屋邸ロケ地として紹介させてもらっていた。正しいと思われる位置を教えていただいたので訂正しました。矢印の部分に現在も残っている痕跡を示してみたので、ストリートビュー画面から探してみてください。(2017年記)

(協力・Sさん)


東宝のDVDソフトには作品によってオーディオ・コメンタリーといって、監督さんや出演者など、当時の関係者による解説が副音声で入っているものがある。「ハワイの若大将」では星由里子さんが解説をされている。その中で星さんが古屋の孫娘役を演じているハヌナ節子さんについて解説しているのだが思わず吹き出してしまった。

「この古屋さんが(ハヌナ節子さんのこと)、知ってらっしゃいます? ハワイの税関の娘さんなんです。(中略・その関係で東宝は撮影機材などの持ち込みに大変便宜を計ってもらったらしい)
で、別にこの人がハワイの美人のお嬢さん、じゃないじゃないですか。みんなで『何でだ?』とか言ったりなんかして。で、この後かしら、ハワイで有名になったアグネス・ラムさんとか、ああいう可愛い人かと想像したんだけど、全然そうじゃないみたいで・・」


その後、「いい人なんですけどね」とか自分でフォロー入れてるが、あはは、星さん、率直でいい人だ!


「南太平洋の若大将」に登場する有田(やはり左ト全)邸もこのすぐ近くなのだ。そちらの方はロケ地近辺が驚くほど変わっていない。ぜひご覧ください。(2010年記)




開始より0:33(アメリカ合衆国ハワイ州オアフ島ホノルル市内)

「全財産5セントか・・ああ、腹へったなあ」

雄一は古屋邸に行く途中のタクシーの中に、パスポートやお金が入ったバッグを置き忘れたことに気がつく。 途方にくれて街を歩く雄一。



(撮影・2015・11・09)

ここはホノルルのメインストリート、カラカウア通りの中心部。背景に見える建物は「シェラトン・モアナ・ホテル」(当時の呼称)。1901年開業のワイキキ地域で初の大型ホテルだ。開業当時の木造4階建ての建物は現在も使用されている。
(現「モアナ・サーフライダー・ウェスティン・リゾート&スパ」)



開始より0:37(アメリカ合衆国ハワイ州オアフ島ワイキキ海岸)

「よーし、いっぱつ唄うか」
「わあ!素敵!聴かせて!」
「うん、俺の歌聞いて青大将が現れるかもしれないからな」
「まあ、それじゃ青大将じゃなくてコブラじゃないの!」
「ホントだ!あははは!」

石山にも会えなくバッグも失くし困り果てた雄一は、日本でのヨットの衝突事故で知り合った澄子(星由里子)に偶然出会う。
夜のワイキキを散歩する二人。加山はウクレレの弾き語りで自作の曲「DEDICATED」(恋は紅いバラ)を唄う。
ロマンチックな名シーンだ。



(撮影・2010・07・05)



(撮影・2010・07・05)

本編では疑似夜景(フィルターなどの効果によって、夜景を昼間撮影すること。アメリカンナイトとも呼ばれる)なのだが、巡礼では夕暮れに撮影してみた。本編では影の方向を見ると早朝に撮影されたようだ。



開始より0:42(アメリカ合衆国ハワイ州オアフ島ワイキキ海岸)

「雄一さ〜ん、石山さんが見つかったわよ!」
「おお!青大将、探してたんだぞ!どこへ潜ってたんだい」
「何いってんだい!ここは常夏の国ハワイだぜ、冬眠してるヘビなんかいるもんかい!」

「ホノルルだけで人口30万、そう簡単に見つかりっこないわよ」」と澄子は言うが、そこは映画、雄一と澄子がいるワイキキの浜辺に石山が偶然現れる。それとも昨夜の田沼の歌が功を奏したのだろうか。



(撮影・2010・07・05)

期待していなかったが見事に当時のままワイキキの浜辺に面して建つホテル。



開始より0:44(アメリカ合衆国ハワイ州オアフ島アラワイボートハーバー)

「馬鹿野郎!おまえもヨット部員だったらもう少しヨットを可愛がったらどうだよ、こんなとっちらかしやがって!まず掃除だ!」

古屋宅を追い出された石山は勝手に他人のヨットに寝泊まりしていると言う。そのヨットに田沼と澄子を案内する石山。
ここはワイキキ海岸の西端にあるヨットハーバーだ。



(撮影・2010・07・05)

左後方、赤矢印が「続社長外遊記」に登場した回転レストラン。さらにその後方にうっすらと見える山並み。だいたいこのあたりで間違いないと思う。






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