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若い狼 (1961)監督・恩地日出夫


開始から0:13(東京都新宿区新宿三丁目・角筈ガード・東側出入口)

「川本よ、道子の奴、綺麗になったと思わねえかい?」
「だけど・・何だか薄汚ねえや」

少年院を出た川本信夫(夏木陽介)は故郷に帰るが、恋人の道子(星由里子)は東京に出てしまっていた。
川本も同郷の福井(鈴木和夫)を頼って東京に行き、道子に再会する。しかし道子はすっかり街の不良になっていた。
この映画の東京シーンは新宿が舞台だ。



(撮影・2020・03・09)

福井は川本、道子に二人が住む部屋の世話をする。その道案内の途中、地下通路のような所を通る。
これは新宿駅の東口、西口を結ぶ「角筈(つのはず)ガード」だ。場面は東側の出入口である。
新宿の東口、西口を歩行者が行き来するのは意外と不便だ。北側なら青梅街道の大ガード、南側なら甲州街道だが大回りになることが多く、この「角筈ガード」は重宝されている。
(地下であるなら「メトロプロムナード」、あるいは昨年(2020年7月19日)開通した新宿駅構内で行き来できる「東西自由通路」があるが)




開始から0:28(東京都新宿区歌舞伎町1丁目)



(撮影・2020・03・09)

場面は変わって、川本、道子、福井の三人が繁華街を歩いている。背景には高架を電車が走っているのが見える(黄色矢印)。
冒頭で舞台は新宿だと見当はついていたが、はて、新宿でこんな角度で電車が見える飲食店が立ち並ぶ通り、あっただろうか。電車はJRではないかもしれない。高架であることから西武新宿線かもしれない。現在は歌舞伎町の近辺からは西武線が走っている様子は見えないが、新宿プリンスホテルが建つ以前なら見えたはず。
1969年の住宅地図を見てみる。西武新宿線が正面に見え、道幅がそれほど広くない繁華街。
ありました。映画と参考にした住宅地図には8年の隔たりがあるが2軒の店舗が一致した。間違いない。歌舞伎町の映画館が密集していた地域の南に位置する一角だ。
住宅地図に書いた矢印が3人が歩いている方向。カメラマークが撮影方向。「とんかつ らん亭」と「富士寿司」の2店が確認できる。


(1969年住宅地図 資料提供:風間ちゃん)

このあとカメラは左にパンして三人は左側にある喫茶店「KAGI」という店に入る。位置を想像してみると、地図では店名が読み取れないが、どうやら「コーヒー〇〇〇〇」が「KAGI」の外観に使われた店ではないかと思われる。(もしかしたら「コーヒーもんばん」(門番)(?)(店内のシーンはセット)。
予想はしていたが現在は店は残っておらず、建物も建て替えられたようで風俗系の店になっていた。






開始から0:29(東京都新宿区歌舞伎町1丁目) >

「おめえのこと可愛がってたセンテキ(「先生」の意)なんてったかな」
「北野先生か?」
「あ、それそれ、胃の手術をするんで、さっき前通ったろ、あすこの病院に入院してるって話だぜ」

続きのシーンで三人は映画館などが建ち並ぶ一画に来る。福井は川本の恩師が近くの病院に入院していることを思い出し川本に告げる。川本は様子を見てくると言って病院の方向に走り出す。



(撮影・2020・03・09)
↑ そこで道子は遊び仲間に会う。後ろに「新宿オデオン座」と書かれた看板が見える。




(撮影・2020・03・09)
↑ 教えられた病院の方向に走り出す川本。




(撮影・2020・03・09)
↑ 川本の走る先を見る道子と福井。

この撮影地はは歌舞伎町の、かつては多くの映画館に囲まれるようにして存在した広場の西の端だ。
現在は映画館もめっきり少なくなってしまったが、この広場は現在も「歌舞伎町シネシティ広場」という名称になり、歌舞伎町の中心として親しまれている。
川本が走って向かった方向には実際「大久保病院」がある。川本を見送る二人の背景は靖国通り方向だ。




開始から0:35(東京都新宿区西新宿1丁目)

「なんだい、シケた面して。場外付き合わねえかい?」
「そっちこそシケてやんな。場外なんて。車で競馬場まで連れて行きなよ」
「バカヤロ、そんなヒマはねえよ」



(撮影・2020・03・09)
↑ 道子と女友達が街角で焼き芋を食べている。大きな交差点のようだ。




(撮影・2020・03・09)
↑ そこにヤクザの幹部有沢(飯田紀美夫)が現れる。背景に高架を走る電車が映る。




(撮影・2020・03・09)
↑ 再び交差点の別方向の画面。都電が見える。




(撮影・2020・03・09)
カメラが別方向に切り替わる。左に大きなガードが見える。横断歩道を渡った先は狭い路地に商店が並んでいるようだ。

ここは新宿の大ガード(青梅街道とJR線が交わるガード)の西側のすぐキワだ。
都電が見えるのは荻窪、新宿を結ぶ「都電杉並線」の起点だ。道路より一段高い乗り場に並ぶ人が見える。
有沢が渡る先に見えるのは飲食店が並ぶ「思い出横丁」。(当時は通称「しょんべん横丁」と呼ばれていた)







開始から1:01(東京都新宿区西新宿7丁目)

川本が街を歩いているとヤクザ者に絡まれる。福井が出入りしている組とは敵対関係にある組織の者たちのようだ。川本は路地に連れ込まれ暴力を受ける。



(撮影・2020・03・09)
ここは新宿西口から北方向に向かう小滝橋通りだ。右が新宿西口方向、左が大久保方向だ。


↑ このロケ地、ほぼ同じカメラ位置で「日本一のゴリガン男」(1966)にも出てくる。



(撮影・2020・03・09)
小滝橋通りから西方向に入る道に連れ込まれる川本。




開始から1:11(東京都新宿区歌舞伎町1丁目)

川本はついにヤクザの組織に入ってしまう。敵対する組織を襲撃、という時に川本も仲間たちと同行する。
溜まり場である「KAGI」を出る川本たち。



(撮影・2020・03・09)

この場面は開始から0時間28分のところで取り上げた川本、道子、福井の三人が歩いている路地のシーンとは逆のカメラ方向だ。




開始から1:19(東京都新宿区西新宿1丁目・角筈ガード・西側出入口)

先の襲撃で川本は、はずみから相手を刺し殺してしまう。
恋人がいる東京に出てきて、真面目に職に就こうとしていた川本だったが切ない話だ。
ひとりになってしまった理子はガードの下に消えて行く。



(撮影・2020・03・09)




(撮影・2020・03・09)




(撮影・2020・03・09)

この場面は開始から0時間13分のところで取り上げた新宿駅の「角筈ガード」を、前のシーンとは逆に通っている。(西口側から東口側へ)



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