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黒い画集 あるサラリーマンの証言 (1960)監督・堀川弘通


開始より0:07(東京都新宿区百人町1丁目・JR山手線新大久保駅付近)

「僕はこの東京の西北の住宅街に住み、妻と子供二人の平穏な家庭生活を営んでおります」

ある中堅繊維メーカーに勤める石野貞一郎(小林桂樹)は郊外に家庭を持っている平凡で善良なサラリーマンだ。
彼には愛人がいる。同じ職場の部下であるタイピストの梅谷千恵子(原知佐子)だ。
愛人がいる、ということは善良ではない、ということになるのかもしれないが、ありふれた日常の世界で、どこにでもいるような人間がふとしたきっかけで犯罪に関係してしまう、犯罪を犯してしまう、というのがこの作品のテーマであると思う。
本作品の原作は松本清張の短編集「黒い画集」の中にある「証言」という作品である。文庫本でも二十数ページ程度の短い作品だ。であるから映画と原作を比べてみると、映画ではずいぶんと話を膨らませてある。登場人物など三倍くらいになっている。結末は同じことでも、そこに至るまでにはいくつかのエピソードが加わっている。
しかし橋本忍の脚本は松本清張の描く世界をまったく損なわずに、新しい脚色がなされているのは見事だと思う。
事実、映画化されたこの作品は、原作者である松本清張も賞賛したということだ。

石野が周りをはばかりながら、彼女のアパートを訪れるために新大久保駅に降りるシーン。

なぜかここに巡礼部分の動画があります。




(撮影・2010・11・08)

新大久保駅は高架上にホームがあり、そこから階段を下ると改札があるという構造は映画製作時も現在も基本的に変わっていない。
線路下はガードになっていて大久保通りがくぐっている。
山手線の新大久保駅から中央線(総武線)の大久保駅を通る大久保通り、さらにそこから南寄りの通称職安通りに至る周辺の現在は、韓国料理店、韓国食材店、韓流スターなどの韓国グッズを売る店などが立ち並び、大変な活気を見せている。




開始より0:08(東京都中野区東中野1丁目)

「課長さん、今日は何て言い訳なさるの?お家へ帰って」
「映画でも見てきたことにするさ」


次に映し出されるのは賑やかな商店街を歩く石野のカットだ。新大久保駅から出てくるカットの続きだと信じるなら、石野は大久保通りを東方向に向かって歩いているはずだ。
探しました。あるものを(後述)。新宿に出かけることがあると、帰りは新大久保方面まで歩き、大久保通りや大久保通りから入る脇道をくまなく。しかし見つからない。諦めて総武線の大久保まで歩き電車に乗る。そんなことを何度か繰り返して三年。
メールを頂きました。
「冒頭の新大久保駅のあとのシーンは東中野駅の南口の商店街です」
えー!東中野!





(撮影・2014・03・31)

新大久保と東中野。遠いような近いような、といった塩梅の離れ具合だ。
言われてみれば大久保通りより狭い道幅に気が付かなければならなかった。大久保通りは当時から車道、歩道の区別があったようだが、この石野が歩く道は車道、歩道の区別が無いようだ。(当時)
画面に看板が写っている「うなぎ江月」「升屋酒店」はいずれも建て替えられてはいるが現在も存在する。ここで間違いない。






(撮影・2014・03・31)

石野は商店街から左に路地を曲がる。
角に「歯科羽生医院」と看板が出ている。この場所にあるのではなく、この路地を奥に進んだ所に「歯科羽生医院」がある、ということを示す看板だ。






(撮影・2014・03・31)

やや下り坂になっている路地を歩く石野。
こちらから見て右に「パーマネント」と看板が見えるがこれは現在は存在しない。
正面の通りの向こう側に建つ商店(せともの店)(矢印)は現存。






(撮影・2014・03・31)

石野はさらに路地を右に入る。
そして路地の左側にある木造アパートの階段を上がる。
アパートには会社で同じ部所に働く千恵子が住んでいる。
アパートの斜め向かい、路地の右手にベランダの形状に特徴のあるマンションが見える。一戸一戸のベランダに45度の角度がついていて全体ではギザギザの形状になっている。
新大久保近辺で「あるもの」を探していたというのはこのマンションなのだ。これなら特徴があるから探しやすいだろう。まだ取り壊しになっていないことに期待して。
しかしマンションがあったのは東中野。しかももう建て替えられていた。調べて見ると新築されたマンションは2010年2月完成とある。残念。石野と同じ視点でこのギザギザのマンション、見てみたかった。




(左:作品より 右:撮影・2014・03・31)

千恵子が住むアパートの階段を上がる石野。
この木造2階建てのアパートは残念ながら現存しない。現在は鉄筋のマンションになっている。しいて同じアングルで撮影すればこんな具合か。
新大久保駅で降りてから一瞬で東中野に移動してしまう石野だが、東中野の商店街に現れて、千恵子のアパートに着くまでは実際に沿った道筋を歩いたことになる。




開始より0:09(東京都中野区東中野1丁目)

「知らぬ顔をすればよかったんだ。なんで頭なんか下げたんだ・・」




(撮影・2014・03・31)

石野がアパートからの帰り、アパートを出てすぐ、石野の自宅の近所に住む保険外交員、杉山(織田政雄)と偶然出会う。石野は新大久保(ロケ地は東中野なのだが)にいることは知られたくないが、ついうっかり会釈をしてしまう。





(撮影・2014・03・31)

杉山はまっすぐ路地の奥に進む。石野とは離れて歩いていた千恵子には気付かなかったようだ。
矢印は羽生歯科。現在も同じ位置にある。






(撮影・2014・03・31)

石野は表通りに出てタクシーを拾う。
前述した「うなぎ江月」「升屋酒店」が見え、その手前に「エバーソフト」と書かれた看板が見える。エバーソフトというのはブリジストンが製造した布団の下に敷くマットレスの商標で当時流行した商品だ。現在もこの位置にふとん店。






(撮影・2014・03・31)

石野が手を挙げたのでタクシーは少し行き過ぎて止まる。この時「小山経師店」という看板が見える。現在もここは「小山表具店」として存在する。

(協力・とら猫金太さん)



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開始より1:07(東京都品川区二葉1丁目)

保険外交員の杉山が無実の殺人容疑で逮捕された。犯行が行われたとみられる時間は、石野と杉山が偶然出会った時間と一致する。杉山は石野にアリバイ証言を求めるが石野は千恵子との関係が明るみに出てしまうことを恐れ、杉山に会ったことは否定する。
石野は自分の足どり捜査をされた場合を考え、念のため千恵子に引っ越しをさせる。

千恵子に借りた新しいアパートを訪れる石野。





(撮影・2014・03・31)

ここは大井町駅から東急大井町線に沿って西に進んだ一角。正面に東急大井町線が走り、画面の左側は品川区役所。道路右側に「飛騨屋」という看板が見え、現在も存在する。

(協力・とら猫金太さん)



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