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河のほとりで (1962)監督・千葉泰樹


加山雄三、星由里子が恋人同士役の作品は若大将シリーズだけではない。この「河のほとりで」(1962年11月23日公開)もそのひとつで、しかもそれが加山雄三、星由里子コンビの若大将シリーズ全盛期の真っ只中に製作されているということを考えると、二人の人気ぶり、多忙ぶりが想像できる。時代位置的には若大将シリーズ3作目「日本一の若大将」(1962年7月14日公開)と4作目「ハワイの若大将」(1963年8月11日)の中間に公開された作品ということになる。


開始から0:07(東京都大田区田園調布3丁目・東急東横線田園調布駅前)

「こんにちは、叔父さん」
「おー、たね子ちゃんか」
「ママの所に行ってらしたの?」





(撮影・2018・06・24)
↑ 田園調布駅の西側、駅前に通ずる坂道を元華族の沢田(東野英治郎)が下りてくる。右側に見える銀杏並木、石垣と大谷石の塀が当時と変わらない。





(撮影・2018・06・24)

↑ 沢田の歩きに連れてカメラが移動し、駅前広場の角まで来る。するとベンチに座って待ち受けている女性の姿が映し出される。先ほどまで沢田が訪問していた多賀谷家の娘、たね子(星由里子)だ。
たね子が座っているベンチの左側にはコンクリートの柵柱が三本見える。しかし現在はベンチの位置に電話ボックスが設置されたためか、③は撤去されてしまったようだ。

比較写真では二本の柵柱の位置を合わせると、後ろの塀の見え方が全然違ってしまっている。撮影位置をもう少し右寄りにし、さらにもう少し後ろに下がり、しかももっと広角で撮影しなければいけなかったようだ。

ロケ地の現在を撮影する際には、いつも映画画面をプリントしたものを現地に持って行き、現在の様子と見比べながら当時カメラを据えたであろう位置と方向を推測する。時代が移り変わって大きく変化している場合もあるが、何十年も経った映画とあまり変わらない景色が眼前に展開することもある。そういう時は「おーっ!ここだ、ここだ」とやや興奮気味になってしまうのか、写真も「よっしゃ、これでOK! 」とその場ではうまく撮れたつもりになってしまい、簡単に済ませてしまうことが多い。ところが帰ってからよく比べてみると、各所に全然目が届いていなかったことに気付く。そんな失敗は何度も経験している。教訓を生かして、ここと決めた撮影位置から、念のために前後左右に移動して何通りか撮影したり、さらにカメラの高さも変えてみて写したりすれば失敗は少なくなると分かってはいるのだが、それがなかなか・・・。いやあ、巡礼の道は険しいです。




(撮影・2018・06・24)

↑ 二人は連れ立って駅の方に向かう。
田園調布駅のこの洋風の駅舎、映画撮影当時と現在、全く同じもののように見えるが、実は旧駅舎は東横線地下化のため1990年に解体され、現在の駅舎(駅舎としては機能していなくシンボル的なもの)は2000年に復元されたもの。




開始から0:56(東京都渋谷区桜丘町)

「駅は真っ直ぐだけど、こっちに曲がると僕のアパートなんだ」
「あら、そう・・男の学生の部屋っていうのを1分間だけ見学させてくださる?」
「どうぞ!」


↓ 学生のたね子(星由里子)は、自分の父親の元恋人の息子であり、偶然同じ大学に通う学生である新太郎(加山雄三)とともに、前出の沢田(東野英治郎)結婚式に出席する。
結婚式の帰り、坂道を下りながら結婚について語り合う二人。




(撮影・2018・11・15)

↓ カットが切り替わり、今度は二人の後ろ姿になる。
この坂道はどこだろう。
結論を言うと渋谷駅のすぐ南側、桜丘(さくらがおか)町だ。




(撮影・2018・11・15)



↑ まず最初のカット、二人がこちらに向かって坂を下ってくる場面から見てみることにする。
画面左端に「大和田病院」と書かれた看板と、「ホテルグリーン」と書かれた看板とが見える。 両方ともそれがそこにあるということではなく、看板が立っている角を入るとそれらがあるということだ。

作品公開から7年後になってしまうが、「1969年住宅地図」(「麻布田能久」さん提供)を見てみる。下図の左下の住宅地図がそれだが「大和田病院」「ホテルグリーン」が読み取れると思う。青矢印は加山、星が歩いた方向だ。
映画画面右側に見える石垣の敷地には、現在「セルリアンタワー 東急ホテル」が立っている。





↓ 次に、カットが切り替わって二人の後ろ姿の画面を見てみる。 駅に近づいたせいか、だんだん賑わってきた様子だ。先程のカットの坂道と同じ道のはずだが。いやいや、どうもそうではないようだ。ここでも画面に写っている看板などを見てみよう。ヒント満載だ。

下図にある映画画面の左から順に見てみると「松屋質店」と電柱の広告がある。その右に「二宮」と書かれた看板。さらにその右に「桜丘ホテル」の看板。そして道路右側にはなんとか「京香」と読める看板が写っている。
先程の1969年住宅地図の右側の方を見てみるとそれらの店舗名が読み取れる。「松屋質店」は電柱の位置にあるのではなく、この先にありますよということだ。
二人の進む道の左側に、4、5階建てくらいのビルが映っている。これは住宅地図にもある「並木ビル」。このビルは現存する。
そしてそのすぐ右側、遠くに当時としては大きいビルが建っているのが見える。これは渋谷駅に隣接して建っていた「東急百貨店東3号館」だ。しかし現在はすでに解体されて存在しない。



そんなわけで、加山、星の二人はカットが変わると東方向に道路二本分、約150メートルほど一瞬にして移動したことになる。しかしまあ映画にはよくある例で、驚くほどのことでもない。

写真を撮りに行った2018年の11月。ご存知のように渋谷駅周辺は2020年の東京オリンピックに合わせて大規模再開発が進行中で、「ヒカリエ」に続いて超高層ビルが次々に建設中であった。加山、星が向かう渋谷駅桜丘口地区も再開発の対象になっているらしく、山手線に近い一角では、すでに多くの店舗がシャッターを閉じている。
私は渋谷には全く暗く(中央沿線に住んでいる者としては渋谷にあまり縁がなく、子供の頃から買い物など、どうしても新宿、あるいは吉祥寺になってしまうせいか)とうとう渋谷についてはあまり分からないうちに大改造ということになってしまった。

ちなみに、1969年の並木ビルが載っているの方の住宅地図にある「日本会館」は「大冒険」(1965)で植木等と谷啓が住むアパートとして、「マツヤ(松屋)質店」は「クレージーのぶちゃむくれ大発見」(1969)でハナ肇の妻、春川ますみが金を工面しに行く質屋として登場している。



↑ 最初のカットのストリートビュー


↑ 次のカットのストリートビュー

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