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生きものの記録 (1955)監督・黒澤 明


開始より1:03(東京都豊島区北大塚・都電大塚駅前停留所)

「死ぬのはやむをえん。しかし殺されるのはいやだ」

と主張する中島(三船敏郎)は原水爆に対して極度の被害妄想に陥っている。
都電(都営の路面電車)に乗り合わせた裁判所参与の原田(志村喬)に都電を降りた後、ガード下の停留所で不安を訴えるシーン。

ロケだとばかり思っていたら、撮影所内に作られた国電大塚駅下にある都電停留所をモデルにしたセットだと知って驚いた。壁面のタイルの汚れ具合など、本物以上にリアルだ。
そんなわけで、このセットのモデルになった場所が、現在ではどうなっているのかを検証するという、ややこしくも変則的な聖地巡礼だ。
当時の東京は都電が縦横無尽に走っていた。しかし時代が進むにつれ、次々と廃線となっていく中で、現在でも三ノ輪橋と早稲田を結ぶ、この荒川線だけが残っている。モデルになった「大塚駅前停留所」は今も存在するのだ。

この作品は都電が多く画面に出てくる。まずタイトルバックがそうだし、歯科医でもある原田の診療所の外にも都電が走っている。そしてこのシーンだ。
現代物の黒澤作品には鉄道が多く登場する気がする。「天国と地獄」では身代金を受け渡しする東海道線、捜査の決め手となる江ノ電。「どですかでん」では幻想の中で電車が登場する。


↑ 早稲田方面に向かってガードを抜けると、線路が右にカーブしている状態もセットは忠実に再現している。
当時は都電の線路が敷いてあるガードの中を一般の車も通行できたようだ。
↑ 写真では分かりにくいが、当時は歩道の段差くらいの高さに乗り場があったようだが、現在は1メートル程の高さがあるプラットホーム状になっている。線路部分の通行は都電専用で、自動車の通行は同じガード下でも別に区切られている。
(撮影・2007・09・24)




↑ 「名もなく貧しく美しく」(1961年・東宝・監督:松山善三)にも、ほぼ同じアングルで都電大塚駅前停留所が登場する。こちらはセットではなく本物の国電大塚駅下。手前に向かって走ってくるのは小林桂樹だ。ガード上部のアールが付いた形状や、つやのある壁面タイルなどを見ると、「生きものの記録」のセットは、いかに雰囲気をよく再現していたかが分かる。



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