オートモデリング 1990年12月号
タミヤ 1/24 モーリス・ミニ・クーパー1275S Mk.1


こじんまりと最小限の部分だけ作って、そこから広がる世界は見る人にイメージしてもらう、という情景もいいものだ思う。この情景はそれを狙ったつもりなのだが・・・。今見るとなんだかはずかしい。
やはりストラクチュアとかがないと背景になるものがないので写真に撮るのがむずかしい。編集部では背景を投射するという試みをしてくれた。
ベースを作るにあたって、実際の道路などはどうなっているのか観察するために外に出て「えーと、路肩の縁石の大きさは」とか「ガードレールの高さは」とか、ポケットからメジャーを出しては計り、メモしたりスケッチしたりする様子は、そうとう怪しかったにちがいない。
「風景」

タミヤ 1/24
モーリス・ミニ・クーパー
1275S Mk.1
 いつもの1/32懐かし情景シリーズから、今回はちょっとはなれて、設定は現代、スケールもオーソドックスな1/24の簡単なディオラマです。車はタミヤのミニクーパー。ミニクーパーじゃなくても何でも良かったんですけど、情景にして絵になりやすいということで、これに決定。雨の水滴以外はストレートに作ってあります。キットについては今さら説明しませんが、言うまでもない傑作キット。それだけでなく、売れゆきとは関係なくロ一タス・セプンと並んでタミヤのスケールモデル・メーカーとしての深みを加えている重要な存在と思います。発売されてから長い期間が経過していますが、現在でも少しも色あせてはいません。さて、それを使って、私のずいぶん以前から暖めていた構想の「雨の情景」を作ってみました。

今回の”風景”は、これまでのものとちょっと趣向を変えて、雨に濡れた街の風景をイメージしてみました。撮影はプロジェクターによる投影も交えて雰囲気を出してあります。よくある風景でしょう。

まずは地面から

 情景ベースの素材に、グンゼのMr.Sボードは最適です。今回は10mm厚のものを、車道と歩道の段差を表すために2枚張り合わせで使用しました。Sボード特有の表面の凸凹が、コンクリ一ト面をうまく表現してくれます。敷石などのスジ彫りは、Pカッターを引いて使うとひっかかるので、定規をあてて、手前から向こうに押して使うと、うまくへこんでくれます。車道のアスファルト部分は、ラフベース混入の塗装をしました。 アスファルトやコンクリ一トは、濡れると色がずいぶん暗くなるので、かなり黒っぼくしておき、その後全体にクリアーを厚めに吹いて、濡れている感じにしました。


樹木のこと

 前号で、情景は本物が一番、これしかないとばかりに、生きている木に無理矢理、塗料を塗りたくって得意になって説明した私ですが、その舌も根もかわかないうちに、今度はエッチング製の樹木です、スケールリンクというメーカーの木の葉のエッチンク・パーツを入手したので、これを針金で作った幹に取り付けてみました。作例ではこのエッチング・バーツを2セット使用しましたが、まだ密度が足りないようです。この製品は樹木にも良いと思いますが、ちょっとした雑草などにも使うと効果的のようです。



濡れたミニクーパー

 車は前にも書いたように、全くのストレート組みです。ただ、ナンバーは、付属の静岡ナンバーから、品川ナンパーに変えてはあります。一応東京の積景にしたかったもので。
 さて問題は雨に濡れた水滴です。地面などはベターッと濡れていれば良いのですが、やはり車はワックスにはじかれて玉になった水滴が、ポディをおおっているのをぜひ表現したいものです。よっほど撮影の時だけに、キリフキで水を吹いてもらおうと思ったのですが、そこはやはりモデラーの性、水のように見えて、水でないものを永久にとどめておきたいと考えてしまうのでした。
 まずはテスト。クリアーのスプレーを軽く吹いてみます。かわくと肉やせしてしまって、ほとんど効果はあリません。次にエポキシ接着剤をつまようじの先に⊃けて、水滴のようにひとつひとつポティにのせてみました。やってられません。結局、実際に試みた方法は、ウレタン塗料という、二液を混合すると硬化する塗料のクリアーを、専用シンナーでうすめてハブラシにつけ、金網の上でシャッシャッとこすって飛び散らす方法です。小学生のころ、図画の時間に同様の方法で絵の具を飛び散らせ、切りぬいた絵の所だけ白く残して模様を作るのをやったと思いますが、あれ方式です。
 しかしこの方法はあくまで作例はどうやったのかというだけで、結果を見れぱ満足のゆく仕上がりではなく、おすすめできる方法ではありません。と、言ったところでもう一度ミニクーバーを最初から作る事を考えると、ま、こんなもんでいいか、となってしまいました。


さて主役のフィギュア

 最初に1/24はオーソドックスと書きましたが、フィギュアに関していえぱ素材が少なく、1/32のほうが1/35のフィギュアを流用できるだけボビュラーと言えます。一昔前は1/24のフィギュアといえばタミヤのキャンパスフレンドといキットくらいしかありませんでしたが、しかし最近は事情が好転して、ハセガワ、フジミからインジェクションでもいくつか出ますし、レジン製の大変できの良いフィギュアも、レース関係が中心ですがモデラーズから発売されています。
 今回はこれらをまぜ合わせて、2体のフィギュアをでっち上げてみました。傘を持って愛車のドアを開けようとしている男性と、にわか雨の中で傘を持たない女性という何の関係もない二人が、切り取られた時問と空問の中で都会の哀愁を表現しています(なんてね)。

今回の情景、いかがだったでしまうか。見知らぬ外国や、知らない時代の情景も夫変良いものですが、こんなごく現実的で目常的な世界の情景も、縮小した現実を積み重ねていった時、「おっ、こんな感じ、こんな感じ」といった世界が現出した時、大きな喜びがあるものです。



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