モデルアート 1987年11月号
Zモデル 1/32 FIESELER Fi103A-1/Re1


前回に続いて今回もレジン製のキットだ。
航空機に強いモデルアート誌で担当させていただいた中で、私は自動車関係が多かったのだが、出来合いのDC-3を除けばこれがいちばん航空機らしいキットだ。
大戦末期のドイツの特殊兵器の資料などで、有人機の開発などの記述を読んでいると気持がなんとも重くなってしまったのを覚えている。


Zモデル 1/32 FIESELER Fi103A-1/Re1

現在唯一入手可能なV1

 一般には「V1」と呼ばれる事の多い、フィーゼラーFiI03のキット化は、いままでHAWKから1/48で出ていたのが、私の知る限り単独では唯一です。このキットは、エンジンから噴射する炎が、透明赤のパーツで人っていたのが思い出され、オールド・マニアにはなつかしいキットでしょう。単独と言ったのは、この他にFROGの1/72 スピットファイアに、ドイツ/レベルAr234に撃墜される役で本機がオマケについていたのもあったからです。
  今回のレジン・キットのZモデル製は、スケールのちがいを差し引いて考えても、前2作を完全に凌駕していると言えます。
 Zモデルというガレージ・メーカーが、常に高品質のレジン・キットを提供しているという事は聞いていましたが、これほどとは思っていませんでした。
 まず表面処理の美しさに驚かされます。よくみがきこまれた実に平滑な表面には、繊細なスジ彫りがほどこされており、よくできたインジェクション・キットと同等と言えます。バリや型のズレ、気泡は皆無で、パーティングラインさえもよく見ないとどこにあるのかわからないほどです。
 アウトラインに問題はなく、セットされているパーツを組み立てるだけで、ほとんど省略のないV1を完成させる事ができます。
爆弾ながらZモデルの手にかかると秀作モデルになってしまう。7500円とやや値ははるが。 スミソニアン航空宇宙博物館に展示されているFi103A-1のラダー部のアップ。

製作

 では順を追って工作上の注意点と感想を書いていく事にします。
 まず胴体の後2/3くらいと、エンシンポッドが左右分割になっているので接着するのですが、レジン・キットの宿命か、またもしかしたら私の入手したキットのみに見られた事なのかもしれませんが、2ヶ所ともややそっていて、両端をつけると中央部で3ミリほどの隙間できてしまいます(逆にそっているよりマシですが)。肉厚なレジン・キットなので、無理におさえつけると相当な力が必要ですが、ここは強引に瞬間接着剤でつける事で解決させました。レジンは瞬間接着剤がよくきく素材ですが、こういう場合のように特に強力に接着させたい場合は、接着面を水ペーパーでやすり(水をつけないで)、よごれや油分に汚染されていない新しい断面を出すとよいようです。
 パーツの合いは決して悪くありません。しかし接着あとや、接着の際のわずかなズレを整形し、つながりのなめらかな面にしようとすれば、どうしても広範囲にやすりがけをせざるを得ず、その結果、せっかくの美しいスジ彫りも多くが消されてしまいます。そこでもし可能なら、レジンは肉厚でもほとんどヒケが出ないので、同社のすぐれたキャスティング技術で本体部分は一体無垢にしてくれたら、かるくパーティングラインを消すだけですむのではないかという感想を持ちました。
 各翼の後縁は充分にうすく仕上げられているのでそのまま使えます。また、エンジンのノズル後縁もうすくテーパーになっていますが、左右分割なので、ここはズレのないように慎重に接着しないと修整がききませんので念のため。インテーク部分はキットでは穴のふちに少し角が立ちすぎているような印象だったので、作例ではやや内側からけずりこんで前縁のアールをゆるやかにしました。
 エンジンポッドは、垂直尾翼と前部支柱の2点で支えられますが、この部分のスリ合せは特に入念にして、エンジンが本体に平行につくようフィットさせます。その他の各部分も、平行、直角を正確に出す事が、このキットでは最も重要なポイントです。
エアインテークにはメッシュを張って筒抜けをカバーしたい。 ラダーの注意書きは目立つのでらしく書いておく。
Fi103は爆弾という役割のわりには塗装パターンが豊富なので、好みで選びたい。

塗装

 塗装は.上面ブラックグリーン、下面ライトブルーが標準で、境界は波形にボカされています、作例では型紙を使わず、フリーハンドのエアプラシで、一発できめてみました。
 細かな注意書き以外、国籍マークなどのマーキングは一切ありません。なぜなら本機は航空機ではなく「有翼爆弾」だからです。
 改造としては、有人タイプのRe3、Re4、梅花が考えられますが、ちょっ待つて下さい。Zモデルでは有人タイプの発売も予定しているとの事です。



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