モデルアート 1987年2月号
モノグラム 1/48 全日本空輸 DC-3


模型雑誌デビュー作だ。
ごく近所に住んでいられる名人のS氏からモデルアート誌に載せてみませんか、とのお誘いがあり実現した。
製作依頼ではなく、すでに完成していた本作を載せていただいたのだが、「GREATEST MODELER'S GALLERY」というのがなんとも気恥ずかしい。
米軍輸送機であるC-47を苦労して改造、塗装をしたのだが、掲載後になってHASEGAWA-MONOGRAMから全日空仕様のキットが発売されてしまった。

モノグラム 1/48
全日本空輸 DC-3
半世紀にわたり世界中を飛び回るダグラスDC-3。まさに傑作機中の傑作機といえる飛行機である。今回の当ギャラリーでは、そんなDC-3を、これまた懐かしい全日空機に料理した河合氏の作品を紹介する。モノグラムのキットをベースに、耕作、塗装の両面から見事にDC-3を再現している。 昭和40年ごろに北九州空港にて撮られた全日空のDC-3。やはり今の目で見ると旅客機といっても小さく、ドアなどはかがまないと入れないようだ。尾輪式で床が坂になってしまうのもいかにも不便そう。

苦悩の50分の1世紀

 C-47をDC-3に改造する、という誰でも考えつくことを思いたったのは、もう3年ばかり前のことです。素材はモノグラムの1/48 C-47。これは最初から決まっていました。なぜなら、デッカクて、ハクリョクがある。という、ほとんど中年モデラーとも思えない単純な理由です。しかしそれにしても輸送機のヨンパチというのは大きい(全幅で約60センチ)。ぺ一パーがけするのにも、ハーハー息がきれるほどです。
 それでも修整するところはして、全体の塗装もすんで、あとはマーキングをして脚を付ければ完成。というところまでいったんですが、気力のほうにも息ぎれがして、その後2年間ぐらいほったらかしにしてしまうことになります。しかしその間、忘れていたわけではありませんでした。なにしろ胴体着陸したかっこうで本棚の上にのっかっているのが、いやでも見えるんですから。だいたい僕は、80%ぐらい完成してあと少しというところでやめちゃうケースが多いようです。
 まずキットを写真などとくらべながらながめる。ここはこうしよう、ここはこんな塗装法で、などと構想を練るのが結構楽しい(いや、いちばん楽しい)。それからいよいよ手をつけ始めて、頭の中で考えていたことがだんだん形になってくる。80%ぐらいできてくると、もうあとの20%は作らなくても、だいたいどういうものができあがるのか、容易に想像がついてしまうんですね。そうなると何か興味がうすれるというか、ほかのことに心がうつってしまって、やめちゃうことが多い。
 でも実はそういう状態って、すごく気持ちのうえで中途半端な気がしていやなわけです。それで本棚の上に目が行くたびに「ああ、あれもやんなきゃ」という軽い強迫観念にとらわれていたわけです。せっかく最初はあれだけ入れこんでたんだから、なんとかしなきゃ、やらないともったいないな、乗りかかった船というか、作りかかった飛行機というか、やっと再開してついに最近、完成までこぎつけたわけです。

忘却の彼方

 そんなわけで、このDC-3の工作のほとんどは3年近く前のわけです。だからほんというと、工作のことはよく覚えていないんです(それで記事を書こうというんだから無責任な話です)。
 だから、塗装とマーキングのことで少し自分なりのアイディアを書こうと思います。まず実機の解説から始めるのが定石のようですが、とにかく製作へと急ぎましょう。

恐怖の濃霧注意報

 さてC-47のDC-3への変更ですが、この飛行機、超ベストセラー、超ロングライフだけあって、バリエーションの多さはものすごい。また、C-47が民間に払い下げられると、DC-3と呼んでしまうといったあいまいなところもあるので、何かよくわかりません(う一ん、ものすごい解説だ)。
 とりあえず全日空機にしようということで調べたんですが、輸入されたDC-3の仕様がまちまちだったようで、各部に相違が見られましたが、その中でもJA5040という機体がなんとか(多少の推測も含めて)外観上の各部が確認できたのでこれに決めました。
 まずモノグラムのキットからの変更は、左側の貨物搬入ドアを塞いで、上部が丸くなった小型ドアに変えます。このドアは乗降時には下に開いて、階段状になっているドアのうら側が、タラップを兼ねるといったもので、プラ材とエポキシパテで自作し、開位置に固定しました。
 それから左側の客室窓がひとつ足りないので、キットのいちばん後ろの窓の後方にもうひとつ追加します(これで左右7つづつになる)。
 ついで、コクピット上部の天測窓をつぷしてパテ埋めすれば、基本的な改造は終りです。あとは、アンテナ類を自作し、エンジンにプッシュロッドやプラグコードをつけたり、主脚部にディティールアップをほどこしました。
 室内はカーテンを付けたのでよく見えない(またはよく見ない)とわリきリ、全く作ってありません。ただ、ドアか閑いているので、そのへんだけそれらしく作りました。
 窓は中央に小銃用の銃眼がモールドされていますが、これは削り取ります。そして胴体に窓を接着後、水ペーパーで胴体と窓がフラッシュサーフェイスになるよう仕上げ、コンパウンドで研きます。そして窓の大きさちょうどに切ったマスキングテープを貼り、塗装が全部終るまで貼りっぱなしにしておきました(だから3年問貼りっぱなし)。

 全体の塗装は、上面が白ですが、素材がオリーブドラブなので、いきなりはちょっときびしいかなと思い、全体をライトグレイで下塗りしました。これはパテで整形したところが、他の面とうまくつながっているかを確認するためにも正解でした。
 このモデルを作る時に意図したことは(.言うことがナマイキだね)航空全社のカウンターにかざってあるようなピカヒカのソリッド風ではなくて、使いこまれたリアリティあるものにしたかったので、それを塗装で表現したつもりです。
 旅客機の白は、より白く見せるために、ほんの少し青を入れるという手法もありますが、あえてそれはしないで、逆にほんの少し黄と黒を人れました。
 下面の銀は、白と黒とフラットベースを加えたスベシャルブレンドです。これをビンにとっておいて、あとで無塗装のトーンのちがいを表現する時に、これをべ一スに黒や白を入れて明暗をつけます(もちろんこれは、スジ彫りを入れてからの作業)。

 次はマーキングですが、なせか私、手描きのマーキングが大の苦手。そこで、デカールやマスキングが活躍することが多いんですが、とくにマスキングは、こんなの手で描けばいいのにと思われるようなところも、やたらマスキングしてピースコンで吹き付けます。ピースコンはあんまり広くとびちらないからいいやと思って、簡単なマスキングで吹き付けると、意外とほかのところまでとびちっていて、あとで泣きをみることがあるので、ほんのちょっとしたところでも、大げさなマスキングをします。作例では横のストライプ、主翼の日の丸及びシリアル、翼前縁のゴム引きなど、マスキングとピースコンですが、そのたびに機体全面をマスキングします(バカみたいでしょ)。
 作業は夜中にやるんですが、あんまり調子にのってピースコンをシューシュー、ブクブク(これはピースコンを洗う音ね)やってると、部屋中シンナーの霧がたちこめて、隙間だらけのドア1枚むこうにはカミさんと子供が寝てまして、シンナー臭いとおこられます。カン入りスプレーをふれば、カラカラ音がうるさいとおこられます。「外でやってよ」などと言われます。あんまり夜中にアウトドアで模型を作るというのも正常でない気がするので、やめて寝ちゃいます。だからあまり作業が進みません。

 次はデカールですが、尾翼のダビンチ・マークは、ハセガワの1/200トライスターに入っているのがサイズピタリなのでこれを使いました。  胴体の「全日本空輸」の文字もデカールですが、自作デカールで、その製法はちょっとした発明ものなので、まあ聞いて下さい。
 まずイタレリのDC-3のキット(1/72)に全日空のマーキングのデカールが入っていて、もちろんサイズ違いでそのまま使えません。そこでこのデカールを1/48に相当する大きさ(1.5倍)に拡大してコピーにかけます。これをハセガワのクリアーデカールにコピーします。コピーされたデカールは、普通の紙のように文字がうまく定着していないのでコピー面をさわらないようにして持ち帰り、クアーを吹き付ければ、オリジナル自作デカールのできあがり。黒の場合しか使えないけど、何でもデカール化できるので覚えておけば役に立ちそうなアイディアでしょ。ただしこの方法は、クリアーデカールがちょっと厚手の紙なので、コピー機が紙づまりをおこしやすく、コピー屋さんがいやがるかもしれません。その時はあんまり無理にたのまないように。
 あ、デカールの前にスジ彫りですが、これは常用のピンバイスに木綿針をくわえさせたのを使い、リベットもこれで入れました。
 スミイレもしましたが、素材がオリーブドラブなのでしなくてもよかったかと思います。また、木綿針のスジ彫りは細くシャープで、Pカッターのスジ彫りと違い、ふちがわずかにめくれているので、いじっているうちに手アカが入りこんで黒くなります(キッタネー)。
 最後にデカールで見えなくなったスジ彫りをもう一回デカールの上から入れ直せばぐっとよくなります。
改造点はここに集中している。すなわち客室の窓を1個増設し、ドアを作り直しているのだ。 適当な汚しとツヤにより最終的な実感を高めている。窓から顔を出すカーテンも心憎い。

若さゆえそして明日へのちかい

 ところでDC-3は初飛行から、昨年でちょうど50年になります。現在でも現役の機体が多数あってその姿は21世紀になっても見られるだろうといわれています。
 ハセガワさんが1/200の旅客機シリーズで、DC-3やそれ前後のフォード3発やB-247、DC-4、6などをモデル化してくれれば小粒で本当に趣味のいいコレクションになると思うんですが、売れないかなあ。
 どーも僕はアキッぽいというのか最初の悲壮な決意で始めたプラモ作りも、終りごろにはだいぶゆるんでしまい、初めの構想とはだいぷ違うものができてしまいます。大物ほどやはりそうなりやすい。
 「出来の気に入らない模型の不快度は、その大きさに比例する」という法則をご存じでしょうか。
 おたがい、大きいだけで、とりえのないものは作らないよう注意しつつ、そして皆様の模型趣味の楽しみが、苦しみに変らないよう祈りつつ今回はこれでおしまい。
 じゃあね、バイビー(あ、古いか)。

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